公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証人が作成する遺言書のことを言います。
遺言者が証人2人の立会いのもと、口述した内容を、公証人が筆記し、遺言者と証人が承認した上で、全員が署名・押印して作成します。
手続に不備があると無効になりますが、公証人と一緒に手続を進めていくので、自筆証書遺言などに比べて大変安心ですし、家庭裁判所での検認手続も必要ありません。
このように、公正証書遺言は他の2つの遺言方式(自筆証書遺言・秘密証書遺言)に比べてメリットは多いといえます。
ただし、公正証書遺言を残すには、何度か公証役場へ足を運ばなければなりません。
※公証人がいる場所を「公証役場」と言いますが、「役場」と言っても、普通のビルの一室にあるような公証役場もあります。必ずしも合同庁舎のようなところにあるとは限りません。
公正証書遺言作成の大まかな流れは以下のようになります。
1.遺言の内容を考える
↓
2.公証人に予約する
↓
3.公証役場に出向く
↓
4.公正証書遺言を作成する
↓
5.公正証書遺言の正本及び当保運を受け取る
(原本は公正証書で保管されます。)
まず、証人2人以上の立会いのもと、遺言者本人が公証役場へ出向いて、公証人に公正証書を作成することをお願いします(嘱託)。
公証役場では、まず遺言者(遺言を行う人)に人違いがないかどうかが確認されます。
もちろん、公証人自身が遺言者と面識があれば問題はないのですが、多くの場合は、本人確認のために印鑑証明書の提出を求められます。
公証役場へ行き、受け付けで公正証書を作成してもらいたい旨を告げますと、公証人のところへ案内されます(いきなり公証役場に出向いてもいいのですが、できれば、事前に電話を入れてから役場に向かうほうがいいでしょう)。
ここで作成してもらいたい公正証書遺言の内容を公証人に説明します。
公証人は、必要な書類を点検した上で、遺言者から受けた説明をもとに、疑問点があれば質問し、その後で公正証書を作成してくれます。
内容が簡素なものであるときなどには、その場で作成してくれる場合もありますが、大体は別の日を指定されます。
指定日には、嘱託した内容の公正証書の原本が出来上がっていますので、遺言者及び証人に閲覧をさせ、問題がなければ、原本の指示された箇所に遺言者本人及び証人が署名押印して手続は終了となります。
公正証書遺言の作成時の注意点・ポイント
1.どこの公証役場(公証人)に嘱託するのか
遺言者自身が公証役場に出向き、公正証書遺言を作成してもらう場合は、どこの公証役場、どの公証人に嘱託しても構いませんが、公正証書遺言の作成を思い立つときには遺言者の体が自由にならないといったケースもよくあります。そういった場合、自宅や病院まで、公証人に出張してもらうことになります。
この場合、公証人が所属する法務局の管内に管轄が限定されますので注意が必要です。
2.証人になってもらう人を用意しておく
公正証書遺言を作成するには、証人2名が立ち会わなければなりません。
「証人」と聞くと、何か後で面倒が起きるような印象も受けますが、実際は公正証書遺言の作成時に立ち会ってもらうだけです。
証人は印鑑を持参します。
なお、未成年者、相続人になるであろう人(推定相続人)、推定相続人の配偶者・直系血族は証人になることができません。
これは、利害関係がなく、思慮分別のある成人に遺言書の作成について証明さいてもらうためということができます。
3.必要書類を用意しておく
身分関係や財産関係を証明するための書類を用意しておきましょう。
・本人性の証明
遺言者本人であることを証明するために、3ヶ月以内に発行された「印鑑証明書」を用意しておきます。
・遺言の内容を明らかにする
遺言の内容には相続人や受遺者、財産などが登場します。それらの存在を明らかにするための必要書類も準備しておきましょう。
例:相続人や受遺者の戸籍謄本・住民票、財産目録、不動産については登記簿謄本(管轄法務局で取得できます)
・手数料算定のための資料
公証人に支払う公正証書遺言作成手数料は、相続される財産の価値によって決定されます。不動産などの固定資産税評価証明書などを準備しておきます。
4.遺言する内容を決める
具体的に「誰に何を相続させるのか」「遺贈するか」「どのように遺産を分割するのか」「誰が遺言を実行するのか」といったところの内容を決めます。
5.相続させるという文言を必ず入れておく
遺産をだれかに譲る場合、そのだれかが相続人の中に含まれているのであらば、「相続させる」と記載します。
相続人以外のものであれば、「遺贈する」と記載します。
6.遺留分
遺留分を侵害する遺言がなされても、遺言自体は有効です。
なぜならば、侵害された相続人は「遺留分減殺請求権」を行使して遺留分を取り戻すことができるからです。
なるべく紛争にならないように、遺留分に配慮した遺言を残しておくほうが無難だということができます。
7.遺言執行者
遺言の中で、相続財産を管理し、遺言の執行を行う「遺言執行者」を指定することができます。遺言の執行をスムーズにするため、信頼できる人や専門家(弁護士、行政書士、司法書士など)を指定しておくと安心です。
公正証書遺言を作成する場合の手数料
遺言の目的たる財産の価額に対応する形で、その手数料が下記の通りに定められています。
(目的財産の価額) (手数料の額)
100万円まで 5000円
200万円まで 7000円
500万円まで 11000円
1000万円まで 17000円
3000万円まで 23000円
5000万円まで 29000円
1億円まで 43000円
※1億円を超える部分については
1億円を超え3億円まで 5000万円毎に 1万3000円
3億円を超え10億円まで5000万円毎に 1万1000円
10億円を超える部分 5000万円毎に 8000円
がそれぞれ加算されます。
上記の基準を前提に、具体的に手数料を算出するには、下記の点に注意が必要です。
@ 財産の相続又は遺贈を受ける人ごとにその財産の価額を算出し、これを上記基準表に当てはめて、その価額に対応する手数料額を求め、これらの手数料額を合算して、当該遺言書全体の手数料を算出します。
A遺言加算といって、全体の財産が1億円未満のときは、上記@によって算出された手数料額に、1万1000円が加算されます。
Bさらに、遺言書は通常、原本・正本・謄本と3部作成し、原本を公証役場に残し,正本と謄本を遺言者に渡されますが、これら遺言書の作成に必要な用紙の枚数分(ただし、原本については4枚を超える分)について、1枚250円の割合の費用がかかります。
C遺言者が病気又は高齢等のために体力が弱り公証役場に赴くことができず、公証人が、病院・自宅・老人ホーム等に出向いて公正証書を作成する場合には、上記@の手数料が50%加算されるほか、公証人の日当と、現地までの交通費もかかります。

